05.Lord's prayer
あいつの塊を見る。
真司。
俺、信じてるから。
きみは必ず、葵くんを助けるって。
――幻聴、だろう。
*****
「なんで俺を助けたの――ッ!」
手術室の外で葵が泣き喚く。真司の背を力一杯叩く。
茜がそんな弟を強く抱き締めていた。
薫はじっと目を閉じていた。
「俺を抱き抱えずに、お父さんが恭介を助けにいってたら!」
梓紗は状況を察するなり倒れ、警察はあいつが刺されたことまではわかっていないが救急隊員にはばれている。じきに連絡が行くだろう。
腕の中には、あいつの息子がいる。
じっと、真司を見つめている。
「悪いな。お前の父親をこんな目に遭わせて」
言おうと思って、やめた。白々しい。
「葵」
溜め息混じりに呼ぶと、葵がびくりと固まった。
「あいつの性格考えたらわかるだろうが。お前を放っておいたら、お前がまたあのおばさんに刺されるなり突き飛ばされるなりして、危害を加えられる。俺が一生、あいつに恨まれるんだぞ」
「もう、そんな言い方しちゃだめだよ緒方」
やれやれ、やっと来たか。
暁の声に顔を上げると、硬い表情だった。
「樋山は?」
「わからん」
「なんでおじさま、ここに……」
薫が驚いたようだった。
「お前たち、一旦、暁の家にいろ。いいな」
「嫌だ。恭介の傍にいるッ!」
「あのさー、葵。さっき緒方も言ってたけど、きみたちが憔悴すると、俺たちが樋山に恨まれるんだよね。ほら、俺の家においで」