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03.Latest news

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 朝、起きたら見知らぬ場所で、隣のベッドにはやっぱり知らない男が寝ていた。
 事実にすればそれだけのことだが、現状を認識すると恐怖心が込み上げてきた。
 幸い隣の男は深く眠っている。
 廊下への扉も施錠されていないらしい。でも、見張りがいたら危険だ。
 緒方真司は考える。
 これは窓から逃げるしかない。


 幸い、外に出てしばらくうろうろすると見知った場所であることがわかった。
 無一文。
 なぜかパジャマを着ていたが、夜道で見咎める者もいない。
 真っ暗な空。――いやに肌寒い。でも、今が冬なわけがないからきっと熱でもあるのだろう。
 でも学校は休みたくない。
 あんなガキどもにいじめられて休むだなんて男が廃る。


 どれほど歩いたのだろう。
 家が見えてきた。
 インターホンを鳴らしたら、なぜかぎょっとした母が出てきた。
「シン、どうしたの」
「どうしたって、帰ってきただけだよ」
 暗がりでわからないが、困惑している。
「まあ、寒いでしょう。入りなさい」
 何かがおかしかった。
 自分の目線が昨日より高い気がする。
 母が、老けてる気がする。
「シン?」
 兄の怜司に似た男がこちらへ歩み寄る。
 夜の街で培った危険察知能力が、まずいと叫ぶ。
 逃げ出そうとした瞬間、男に足を払われた。
「お母さん、縄」
 男が冷静に呟く。
「シンがどこかおかしい」
 自分の家であるはずの場所で、真司は手枷を嵌められてしまった。

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