図書室の主 | ナノ

04.書庫整理中

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 我ながら諦めが悪いと思いつつも、気づけば彼を目で追っている自分がいる。

 真司が信任率98パーセントで生徒会長になってから三ヶ月。真司に振られてから、三ヶ月。

 高二になり、彼とクラスが分かれ、恭介は図書委員長になっていた。

***

 休み時間、中学校舎から高校校舎を眺めるのが日課になってしまった。

 進路別にクラス分けされ、弁護士志望の彼は文系、高校校舎。恭介はとりあえず潰しがきく理系を選択して中学校舎にいる。

 委員長とか級長とかそんなものに興味はなかった。けれど、彼に正当に会う理由がほしくて気が付いたら委員長に立候補していた。生徒会執行部管轄の委員会だったら、召集がかかったときに堂々と彼に会える。

 更に委員長代表になったので、生徒総会や学園祭などの行事前は人目を憚らず生徒会室を訪ねることもできる。


「恭介、それ、なんていうか知ってる?」

「ストーカー」

「わかってるならやめろ」


 窓際の亮介の席を占領しているせいか、最近亮介の機嫌が悪い。

 今日の放課後は、先日の級副長会で出た生徒総会の議案を生徒会室で吟味することになっている。

 図書室へ行っても、挨拶ひとつない。貸出手続きのときも終始無言。

 生徒会室では、他の生徒の手前和やかに会話することができる。嬉しい半面、未練がくすぶるのを恭介は感じている。

 休み時間終了のチャイムが鳴る。

 一瞬、窓越しに彼と目が合い、逸らされる。

 胸の奥が訴える痛みに慣れることはない。

***

 生徒総会の議案は各クラスからふたつ提出される。
 そのほとんどが委員会関連のものなので生徒会長と委員長代表で話し合いをするのが恒例。年度によってはクラブ長代表も交えるらしいが、副会長名賀に訊いたところ今年は委員長代表だけらしい。

 中一から高一までは五クラス、高二、高三は六クラス。足して掛けて六十四件にものぼる議案は、この話し合いでだいたい十ほどにまとめられる。それをさらに級副長会にかけるのだから道のりは長い。

 放課後の生徒会室には既に彼がいて、恭介が着くと紙の束を差し出してきた。


「先日の級副長会で提出されたもの。一応、俺なりにまとめておいた。恭介はどう思う」

 ぱらぱらと捲り、目を通しながら彼の声を聞き落ち込む。

 図書室以外でふたりきり、話しかけても無視されない状況なんて久しぶりなのに、彼はさっさと終わらせたいらしいと勘繰る自分が嫌だ。

 真司が真面目なのは、恭介もよく知っていたはずなのに、僻みはどこまでも人を貶める。

 恭介の中では議案は四つに分類された。いくらなんでも少なすぎる。彼のまとめた紙に目を通すと五つになっていた。

 体育委員と保健委員の統合、宗教委員のクリスマス募金を月一にして福祉施設に寄付、校外でのマフラー着用許可。ここまでは真司と一致している。


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