知人と言い張るきみ | ナノ

08.幼馴染の存在

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 点滴が取れて、動きやすくなってほっとした。実際にはそんなに動けるわけではないけれど。

 人の気配で岸本は目が覚めた。


「あ、瑞樹起きちゃった」


 水性ペンを片手にこちらを向いてにっこり笑っているのは幼馴染の寛樹。

 我が物顔で岸本の横に寝転がっている。

 もうどこをどう突っ込めばいいかわからない。とりあえずは、


「久しぶり」
「それはあっちにも言ってやってくれ」


 寛樹の指差す方を見れば苦笑した樋山と亮介がいた。


「あー、悪いね。久しぶり」
「いいって」
「俺らも久しぶりに恭介にも会えたしね」


 岸本を除いたこの三人は幼稚園から、岸本自身とは小学校から一緒だ。まあ幼小中高併設した学校にいたから、内部進学である限りみんな幼馴染ということになってしまうが、この四人は特別に仲が良かった。


「にしても、お前起きるタイミングよすぎ。もう少しでヒロが肉って書くとこだったのに」
「いざとなったら樋山が止めてくれると信じてる」


 にやにやしながら言う樋山に返すと彼は照れたように笑った。


「毎日来てくれたんだってな。ありがと」
「夏休みだったし」
「暇だったし」
「ま、ちょうどいい口実?」


 亮介、樋山、寛樹。なんだかひどくないかと思いつつ久々に友人たちにあって気分が昂る。

 先日、体が動くようになって見舞いを確かめていたらすべて本だった。


「あれ、緒方のチョイス?」
「あ、よくわかったね」
「樋山がいるし。樋山と言ったら緒方だろ」
「まーな。忙しいから来れないけどよろしくって」


 ここにはいない樋山の友人の名を出すと彼は自慢げに胸を反らし、亮介と寛樹は顔を見合わせて笑っていた。

 ずっと同じ環境にいるしがらみもあったけど、卒業してみれば本当にいい環境で、いい友人や幼馴染に恵まれたと思う。


「で、なんでこの現代日本で栄養失調になったわけ?」


 興味津々といった様子で顔を近づけて訊いてくる寛樹を引き剥がしベッドに腰かけた。


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