07.母との会話
今日は8月……何日だろう。数学が一段落し、緊張が切れてしまった。
適当にノートにシャーペンを挟んで寝不足で妙に冴え冴えとする頭でケータイを開く。
その日付から、どうやら4日間眠っていないらしいと冷静に考えて、立ち上がろうとしたらふらついた。
時間を見忘れたことを思い出して再びケータイを開く。午後一時。
お腹が鳴って、でも苦笑する元気もなくて、やっとの思いで玄関に辿りつく。
目指すはスーパー、買うのはアンパン。
ここ最近の岸本は、アンパン一個を四等分し、朝4分の1、昼4分の1、夜2分の1な生活を送っていた。
しかも今日は睡眠不足。
財布は尻ポケット、左手に鍵、右手にケータイ。
ぼーっとしながら鍵を閉めてアパートの階段を降りようとしたら意識が途切れた。
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目覚めたら自分の家ではない天井で、首を動かそうとしたが力が抜けきって動かなかった。
恐らく病院だろう。
人の気配がするのでなんとかこちらへ気づいてもらおうともそもそすると、こちらを向いたのがわかった。
「あ、みーくん起きた」
「……お母さん、お久しぶりです」
のほほんとした声、母がすぐ脇にいるのがわかる。
ゴールデンウィークは秋一を探すのに必死で、夏休みに入ってからは勉強が忙しくて帰省どころか連絡すらしていなかった。
ひとりっ子なのに親不孝をしている自覚がある岸本は罪悪感で、今、体が動かなくてよかった、とこっそり思ってしまった。
「点滴打ってるから動いちゃだめよ」
「動きたくても動けない」
「すごいよね、みーくん、栄養失調と睡眠不足だって。どうしたの?」
「今、何日?」
告げられた日付に溜め息が出る。
今日、入れていた模試は諦めなくてはならないらしい。六千円もしたのに、なんて場違いなことを考えていた。
「8日間。びっくりしちゃったよ」
「ごめんなさい」
母が、視界に入ってくる。