04.空白の時間
最初は秋一が帰ってきてただただ安堵していたけれど。
彼のせがむカニ玉を作っていたら疑問が湧いてきて、更にはお腹が満たされたらもうそのことしか考えられない。
じとっと秋一を睨んでも、さっきふてくされて感情が抜けきってしまったのか、いつもの不機嫌そうな表情しかしていない。
「ねえ」
呼びかけても、目線すらこちらにやらないってどういうことだ。
軽く頭痛を覚えつつ、再度呼びかけるが無視。
いやもういい、慣れた。寂しいけど。
というか秋一は本当に俺のことが好きなんだよねえ!? と疑いつつ秋一を小突いたら恨めしげに見上げられた。
いやいや恨めしいのは俺の方なんですけどと言いたいのをぐっと堪えて質問をぶつけてみた。
「君、大学は?」
ふいと目を逸らされ、ああ言いたくないんだね、じゃなくて。
とりあえず質問を変えよう。
「親御さんと連絡は?」
「――家出したのは一日だけだ。祖母の家に行った」
と驚愕の返事をさらりと彼から告げられ開いた口が塞がらない。
本格的に痛み出した頭を押さえ深呼吸。
「秋一、君ねえ……。君が失踪したっていう噂、知ってるかい?」
「知ってる」
まったく悪びれた様子がない。さすが我が親友と岸本は嘆きたいような嬉しいような複雑な気分だ。
「なんでメールに返事くれなかったの」
「岸本、好きだ」
「なんで返事をくれない?」
「返事をくれ」
会話がまったくかみ合わない。秋一と視線が交差し火花が散る。
――『わかってて、かわすんだな』
つまり、岸本が理由を知っている?
「明日帰る」
「そうかい相変わらず唐突だね。でも駄目だよ。ちゃんと答えて」
「情けないな、自ら考えることを放棄するとは」
「ノーヒントでどうやって答えに辿りつけと言うんだい?」