09.彼の叫び
僕は人が怖い。
傷つけるんじゃないか、傷つけられるんじゃないか。
だから友達はいらなかったんだ。中高の連中は優しかったから、友達がいなくても困った時に訊いたら答えてくれるやつらばかりで不自由はなかった。
甘えていた。わかってる。
岸本は――岸本は誰とでもうまくやっていくだろう。
お前の中で俺が一番じゃないとわかっていた、だから心地よかったというのは傲慢か?
誰かの一番になりたかった。
でも、なれないことはわかっていたし、怖かったんだ。
近づいても、壊れなさそうだと思った。
壊してみたいとも思った。でも、お前が壊れたらどうなる? 僕はひとりだ。そんなの、嫌だ。
あのな、みんな。
僕は、別に弁当をひとりで食べたり、移動教室をひとりですることが嫌だったわけじゃないんだ。
誰も僕のことを見なくなる。
そのことが……怖い。
知り合いだったら、当然そんなこともあるだろう? 耐えられる。だけど、友達は――友達は駄目なんだ、捨てられたら僕はどうすればいい?
僕は――岸本瑞樹が好きだ。
どうしようもなく欲しい。
でもあいつの気持ちが得られないなら諦めよう、と思ったけど――。
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歯を食いしばったから彼から流れた涙は綺麗だった。
手を伸ばそうとして、また寛樹に抑えられた。
寛樹は冷めた目で秋一を見ていて、樋山は腕を組んでじっと、亮介は頭を撫でてやっていた。
自分が悪い。
岸本はわかっている。
それでも、もう、どうでもよくなってきた。
壊れても、壊されてもいい。
俺は、秋一と一緒にいたい。
おわり。