08.幼馴染の存在
寛樹の言葉に険が増してきて亮介が止めに入ると不服そうに口を噤んだ。
気まずい沈黙。それよりも気になることが合った。
「なんで、俺が倒れた原因が秋一だと思うんだ?」
「瑞樹が倒れてる間、いろいろあったんだよ」
静かに樋山が言う。
聞きたいような聞きたくないようなそう思っていると樋山はさらに続ける。
「あのさ、秋一。俺らはね、心配なんだよ。心も体もぼろぼろになって、どうしたいんだい? 岸本――瑞樹が倒れたのは、親友の君のためかな。俺は、瑞樹が自分を壊したいように見える」
優しく秋一へと語りかけているようで、岸本にも向けられた言葉が鋭く突き刺さる。
秋一が頭を抱え、壁にもたれずるずると座り込んだ。
静かな空気。
しかし、気まずくはない。
みんなが答えを知っているけれど口には出せなくて、それが明らかにされる瞬間を待つ、希望と恐怖がないまぜになった奇妙な興奮。
「僕、は――」
秋一が岸本を見つめ、おもむろに口を開いた。
おわり。