08.幼馴染の存在
寛樹と睨みあうがどちらも折れない。腕が痺れてきた。
「秋一はともかくとして、瑞樹が俺らに隠し事ってあんまりじゃない? 俺ら、すっごく心配したのに」
「心配してくれなんて言ってないしそもそもそれとこれは別だ」
「岸本……」
「ふーん、やっぱり隠してるんだ」
呆れたような秋一の声とつまらなさそうな寛樹の声。しまったと思うが覆水盆に返らず。
押し殺したような笑いが聞こえると思えば樋山と亮介で、笑う暇あったら味方しろと思いつつもその思いが伝わったとしてもけして加勢してくれないことはもう知ってる。
「お前らには関係ない」
そっけなく秋一が吐き捨てると寛樹の眉がおもしろいほど吊りあがった。ふたりの間で火花が散る。もう嫌だ。亮介を招き寄せて耳打ちする。
「亮……。止めろよ……」
「嫌だね。瑞樹が白状すればいいだけだろ」
「幼馴染でも言えねえことあんだよ」
「それもそうだな」
「わかったなら止めろ」
「無理」
「……。樋山ぁ」
「こっちに振るなよ!」
亮介、樋山、岸本でこそこそと話している間にも秋一と寛樹の睨みあいは続いている。
「ねえ、本人に言ってあげたら? じゃないと俺がばらしちゃうよ?」
「それは」
珍しく秋一が言葉に詰まった。
「俺ら、瑞樹とは六歳からずっと一緒にいんの。行動見ればあいつが何考えてるかくらいわかるよ。秋一、君はいったいどうしたいの」
「ちょっと待て。この場合悪いのは俺だ」
「瑞樹は黙ってて」
寛樹の話を聞いていると一方的に秋一が悪いように聞こえるが、今回の原因は岸本だ。岸本が煮え切らず、逃げ道ばかり残していたから――彼の気持ちに明確な答えをつきつけなかったからこんなことになった。
「瑞樹はちゃんと答えを出したよ。君のために体を削った。秋一、君はどうなんだ? 瑞樹のためにここまで」
「ヒロ、やめろ」