06.修学旅行の夜
親友。
ただの意地で言い張っていた四つの音が、急に実感を伴い始めた。
音だけでなく、彼を無条件に信頼しそうだ。
「秋一、俺ら親友だから」
返事はない。
眠れそうにない。
ぼんやりしてやっと寝入ろうとした午前一時。
まくら投げから帰ってきた同じ班の連中に叩き起こされて、岸本自身も寝不足で妙に興奮してしまって、班のメンバーではしゃいで写真を撮る。
すでに寝ていた四人を起こすのも忍びないので、班員を別の部屋へと追い出し、再び就寝。
「秋一」
恐らく、岸本と同様眠れていなかったであろう彼に呼びかける。
「友達って、いいもんだろ」
「……知ってる」
「みんな、秋一のこと友達って思ってるから撥ね退けないでほしいな」
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鮮明に憶えている。
忘れられるはずがない。
彼は、ぷいとそっぽを向いた。
そして――、そう、あのときも抱きしめて寝たのだ。
何も考えずに。
それ以上思考を進めたくなくて、軽く頭を振って追い出す。
「勉強、しなきゃ」
のろのろと机に向かう。
彼の夢に、目標に追いつかなくては。
時刻は午前二時。
大学の勉強と合わせてやっていたら、時間なんていくらあっても足りない。
おわり。