知人と言い張るきみ | ナノ

06.修学旅行の夜

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 親友。

 ただの意地で言い張っていた四つの音が、急に実感を伴い始めた。

 音だけでなく、彼を無条件に信頼しそうだ。


「秋一、俺ら親友だから」


 返事はない。

 眠れそうにない。

 ぼんやりしてやっと寝入ろうとした午前一時。

 まくら投げから帰ってきた同じ班の連中に叩き起こされて、岸本自身も寝不足で妙に興奮してしまって、班のメンバーではしゃいで写真を撮る。

 すでに寝ていた四人を起こすのも忍びないので、班員を別の部屋へと追い出し、再び就寝。


「秋一」


 恐らく、岸本と同様眠れていなかったであろう彼に呼びかける。


「友達って、いいもんだろ」
「……知ってる」
「みんな、秋一のこと友達って思ってるから撥ね退けないでほしいな」


******


 鮮明に憶えている。

 忘れられるはずがない。

 彼は、ぷいとそっぽを向いた。

 そして――、そう、あのときも抱きしめて寝たのだ。

 何も考えずに。

 それ以上思考を進めたくなくて、軽く頭を振って追い出す。


「勉強、しなきゃ」


 のろのろと机に向かう。

 彼の夢に、目標に追いつかなくては。

 時刻は午前二時。

 大学の勉強と合わせてやっていたら、時間なんていくらあっても足りない。


おわり。

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