知人と言い張るきみ | ナノ

06.修学旅行の夜

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「秋一、優しいよね。みんなを傷つけないように、必死で気を遣ってる。さすが俺の親友って言いたくなる」


 冗談めかして、でも結構本気。

 彼の呼吸が、一瞬止まった。起きてるんだと確信したら、嬉しくて顔が見たくなった。


「ねえ、秋一、こっちを向いてよ。俺もそっち見るからさ」


 再び寝返りを打ちとんとんと彼の肩を叩くと、渋々といったように彼がこちらを見る。

 暗闇の中でもわかる無表情。――寂しさ。


「知り合い、だ」
「もー、またそんなこと言って」
「中途半端に僕に構うな苛々する」
「中途半端じゃないよ。すごく秋一が好きだよ。親友だからね」
「……親友がいないのに気づかなかったのは誰だ」
「俺。でもね、ちゃーんと気づいてたよ。眠いんだと思ってた」


 彼の目が見開かれる。腕を伸ばして頭を撫でた。

 おとなしくされるがままの彼はかわいかった。


「岸本」
「なあに」
「自分を殺すな――親友」


 今度はこちらが息を止める番だった。

 彼を撫でる手も行き場を失ってしまう。心臓を鷲掴みにされたような、恐怖と期待がないまぜになった高揚感。


「それ、どういう」
「僕の親友でいてくれると言うなら、自分を殺すな。――誰にでもいい顔をするなと言ってるんだ馬鹿」
「馬鹿ってひど……。いや、でも誰にでもいい顔してるわけじゃ」


 彼は仰向けになって天井を見つめている。

 岸本は秋一をじっと見つめている。


「僕は、人を傷つける」
「……うん」
「今も、岸本を傷つけた」
「それは」
「……僕、人を傷つけるからな。おやすみ」
「え、ちょ、待って」


 顔を背けられてしまった。


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