知人と言い張るきみ | ナノ

05.朝

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 中から出てきたのは大量の写真。

 ――岸本が11月まで、秋一に送り続けた夕食の写真すべてが現像してあった。

 最後の11月30日の写真の裏には彼らしいコメントが添えられていて、今度こそ声を抑えきれず叫んだ。

 叫んでも叫び足りなくて、喉が枯れそうだったけれど叫び続けた。

 彼の特徴であるブルーブラックの0.4のインクはまだ乾ききっていない。


“今度、気の置けない友人たちで集まって岸本の手料理を食べよう”


 あんな言葉を吐いたのに、泣かせたのに、まだ友人でいていいのか。

 お前が欲しいのは恋人で。

 俺はお前の親友でいたくて。

 逃げる余地を残すのか。

 俺を逃がしてもいいのか。

 友人、と言えるのはいつものメンバーでいいんだよね?

 俺はもちろん親友だよね?

 でも、秋一が欲しいのは平穏と恋人――っ!

 整理のつかない感情は声とともにぶつりと途切れた。

 息が苦しくて肩で息をした。

 秋一の字を眺める。自分の料理を眺める。

 これでもう後に引けないねえ、なんて言ってる場合じゃない。

 今度会うときはふたりとも笑顔で。

 今度別れるときにも笑顔で。

 そのために今、やるんだ。


 おわり。

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