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志岐は笑いたいのか泣きたいのかわからなかった。
秀の告げた、「お前をひとりにせずに済む」ことの意味を、今、志岐は悟った。
「帰りなさい、樹くん。大和に送らせます」
「おじさま」
「また、お会いしましょう」
大和を呼び、駅まで樹に付き添うように言う。
大和は樹の泣いている様子にぎょっとしていたが、何も言わず、ただ頷いた。
自分たちの息子が去った居間で、志岐はにっこりと笑った。
もう、ここにいない恋人へ向けて。
いいかい、秀。
俺は怒っている。
樹くんはきみではない。
俺が欲しかったのは生涯、きみだけだ。
すべて条件は呑んだ。