本気であなたに恋をする | ナノ

03.王子は現在夢の中

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「俺の心、傷つけて満足?」
 朝陽をあやしながら、暁は自分でもわかるほど傷ついた笑みを浮かべていた。
「お前の場合、自業自得」
 運転席の緒方は暁の神経を逆撫でし、助手席の樋山は「ごめん」と呟いた。
 朝陽の瞳にはときどき涙が溜まるが、甘え泣きのようなものなので暁は気にしていない。
「なあ、暁」
「なに」
「お前、草場のこと、好きだった?」
「真司」
 咎めるように樋山が緒方を呼ぶ。
 暁は腕の中の朝陽の頬を突く。
「わからないよ。俺に恋は向かなかったみたい。――緒方、このまま送ってってよ」
「わかってる」
 幼馴染のお節介の真意も、暁はなんとなくわかっている。
 朝陽を、あるべきところに返すべきこともわかっている。
 だけど。
 もう、選んだのだ。
 この命を愛せるときが来たとき、なにかに気づくだろう。
 いつか。
 いつか。
 朝陽と出会えてよかったと思えますように。


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