家族になるまで | ナノ

08.家族の時間

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「いつから?」
「きみのとこにいった週ぐらいかな。日にちは数えてないよ」
「いいのかそれで」
 ソファに真司を座らせ、暁が膝を折って視線を合わせる。
 ごめんね、緒方。
「俺も結婚しようかと思ってるんだ」
 心配してくれてありがとう。
 不快そうに眉を顰めたその顔を見て、もう見当はついているのだと悟る。
「だから朝陽ちゃんは邪魔だと」
「うん」
「嘘吐くな」
「嘘じゃない」
「名賀と……名賀と同じことをしてるんだぞ」
「全然違う。返しただけ」
 真司は暁を睨んだ。
 暁は微笑んだ。
「緒方、祝福してくれる?」
「嫌だ」
「俺の人生なんだけどなー」
「わかってる。だけどこれは、駄目だ」
 妙に真っ直ぐな男。
 己のことにはありえないほど非常識だが、情の通った男。
 きみを騙すにはどうすればいいんだろうね。
 暁が大きな溜め息を吐いた。
「あのね、緒方。朝陽は真朝の子で、父親までいるの。俺よりも血の濃い、家族だよ」
「血の繋がりなんかどうでもいいだろう」
 それが紛れもなく本心だとわかるからこそ。
「きみがそれ、言うの」
 どうしようもなく、悲しくなった。
「見た目にこだわって、血にこだわったきみが、血の繋がりはどうでもいいって?」
「だってお前が」
「よくもそんなこと言えるね」
「お前がそんな顔してるから!」
 ほら。
 きみは騙せない。
 言葉を探したけど、見つからない。
 きみは俺の味方でいてくれる。
 信じてる。
「あのさ、緒方」
「ん」


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