07.夫婦の時間
「今,他に謝らないといけないことがある」
「なあに」
「朝陽ちゃんを預かってもいいか」
「預かるって暁くんに言っちゃったんでしょ?」
「……実は」
「いいよ」
何も訊かずに彼女は笑う。
*****
「緒方のおじさまとお風呂」
風呂に入れるために朝陽を起こすと,ぽつりと呟いた。
「そうだよ。恭介もお仕事あるからね。保育園もしばらくはお休み。朝陽ちゃんはすみれさんとお留守番。できる?」
「お父さんは?」
不安な顔をしている。
「連絡待ちだよ」
「そう。おじさまは?」
「……帰ったよ?」
物言いたげな様子から目を逸らす。
「何か言いたいことあったのかな」
「ゼリー食べたい」
「お。じゃあおじちゃんが明日,作ろう」
「おじさま,結婚って楽しい?」
「たのしーよ」
「あさひも結婚しようかな」
「それ,お父さんの前では言わないほうがいいよ」
キスひとつで大騒ぎしていたから,とは言えない。
朝陽を風呂に入れ,寝かしつけて,すみれと目が合う。
吸い寄せられるように近づいて,そして,どちらからともなく腕を背に回す。
混乱が宥められていく。
真司から離れたが,急に寂しくなった。
「すみれさん」
「うん」
「……ただいま」
彼女がほっとしたように笑うのを見て,涙が零れた。
「え,ちょ,なんで……」
「すみれさん,ごめんなさい」
「いや別に何も謝ることは」
慌てるすみれに頭を下げた。