家族になるまで | ナノ

05.4週目

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 4週目は体に触れる。
 手を伸ばして触れようとして,そして真司は気づく。
「妙に,照れる」
「私も」
 これだったら,抱きしめるほうがまだいい。
 顔も見えないし。
「恋愛,したことないんでしたっけ」
 誤魔化すように言えば,すねたように目を逸らす。
「……ずっと、女子校だったもん」
「大学は共学だっただろう」
「勉強してたもん。それに恭ちゃんが、私は恋愛には向かないって」
 それはなんとなくわかる気がする。
 寝転がった彼女の隣に真司は足を伸ばしたまま座る。
「すみれさんは,どんな子だったの」
「私? えー……。真面目で気が優しくて素直な子だったよ」
「へえ,そう」
 衒いもなく彼女は言う。
 きっとそうだったんだろうなと真司も思うから頷く。
「部活は。何してた」
「部活はね,してなかったの。真司さんは」
「俺もしてなかった」
「へえ,意外!」
「そうかな」
「文芸部っぽい!」
「理屈っぽく夢見がちってこと?」
「ううん,図書室にいそう!」
 じりっと胃の底が痛んだ。
 それでも,今は笑える。
「ねえ,眠たいんだけど,今日このまま寝てもいい?」
「あ,うん,わかった」
 唐突な彼女の要求に,今度こそ笑った。
 掛け布団を引っ張り上げてすみれは笑う。
「でも,よかったー。性的に触れるのが来週で。今日,私,生理なの」
 生理。
 聞いたことはある。
 想像したこともある。
「あのね,生理っていうのは血が」
「いや,わかってる」
 黙りこくった真司が困惑しているように見えたのか,すみれが説明し始めたので慌てて止める。


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