04.3週目
3週目は,抱きしめて眠るはずだった。
彼女を腕に抱いたまま,彼女が眠りに落ちるのを見届けて自身も眠った。
そして夜中,息苦しいらしい彼女に股間を蹴られて飛び起きた。
「これ,意外と難しいね」
真司の恨めしそうな視線を物ともせずにけろりと彼女は言う。
「すみれさん,普通に起こしてほしい」
「声掛けたけど,どんどん強くなっていくんだもの。緊急事態なの」
なんというかこういうところは本当に血の繋がりを感じる。
苦肉の策として,すみれが真司を抱くことになった。
なるほど苦しい。
そして胸の感触がなんとも言えず微妙。
嬉しいとか,おぞましいとかそんなのではなく。
ただ,「柔らかい」。
「男の人って,固いし臭いってホントなのねえ」
しみじみと言うすみれにどう返事すればいいかわからないまま,気づけば眠っていた。
*****
幼馴染に会ったのは本当に偶然だ。
職場近くの本屋から出たとき,ばったりと。
暁の姉と――娘。
真朝はなんてことのないように笑いかけたが,真司は自身の眉間に皺が寄るのを感じていた。
「久しぶりね,緒方くん」
足が動かない。
朝陽は怯えたような表情で真司を見ている。
「すみれ,元気?」
声が出ない。
だって,ありえない。この組み合わせは。
真朝が結婚してから,暁は朝陽と真朝を余計に会わせたがらなくなった。
「暁は?」
「やだもう,それ」
にこっと笑う真朝は真司が何も知らないと思っている。
朝陽が真朝の実子であり,暁に押しつけ,そして朝陽の父親と結婚した後,引き取ろうと画策していることを,そしてそれを真司が知っていることも,真朝も朝陽も知らない。
「暁はどうした。体調,悪いのか」
それしかない。
真朝は一瞬,顔を顰めた。
「子どもの前だよ,不安にさせないで」
「朝陽ちゃん,お父さんはどうした?」