03.2週目
「えー……。見せつけるためじゃない？ 樋山に」
「そうだった気もする」
「練習する？」
「お前と？」
「そう」
「誰に見せつけるんだ。朝陽ちゃんにはまだはや」
「切るよ」
切れた。
寝室に戻り、彼女の寝顔を見つめる。
あいつとは違う、何か。
見た目が似ていれば、愛せると思ったのに。
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すみれが目に見えて沈んでいる。
何かあれば聡明な彼女のことだ、自分から話すだろうと真司は気づかないふりをすることにした。
その晩もまた、話し相手は暁だ。
「いつキスしたくなったか覚えてるか」
「きみとキスしたくなったことなんてないよ」
「安心しろ、俺もだ。真面目に訊いてるんだ、答えてくれ」
「俺の意思も尊重してよね」
「頼む、暁しかいないんだ」
「もっと別のこと頼まれたい。きみにも頼むから」
「ああ、朝陽ちゃんならいつでも預か」
切れた。
無理に笑おうとするすみれを見て、真司は自分の確信を強めた。
彼女の性格を考えると、それは単なる遠慮ではないと思う。
もし、真司の仮説が正しいならば、やり直せる。
しかしそれを彼女本人に確かめる度胸が真司にはない。
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相変わらずすみれは気が塞いだ顔をしている。
真司は今日も彼女から目を逸らす。
「どんなときにキスを拒む？」
「すみれさんに直接訊きなよ」
「できないから困ってる」
「きみらしくもない。だいたい俺はキスを拒んだことがない」
「確かに。俺ともしたな」