02.1週目
通常よりも低い声は、朝陽を起こさないようにするためか。
「きみたち、もう友達には戻れないだろ」
暁の言葉に、真司とあいつは暁と朝陽が降りるまで項垂れるしかなかった。
「じゃあ、考えなよふたりとも! おやすみ!」
乱暴に閉められた扉に、もうそろそろ愛想を尽かされるかもしれないと思った。
「俺、降りた方がいい?」
車を走らせたとき、ぽつりとあいつが言ったが真司は無視した。
暁の家からあいつの家まではどれほどスピードを飛ばしても40分は掛かる。
重苦しくなく、むしろ心地よい無言のままあいつの家に着き、あいつはいつも通り車を降りる。
「暁、怒らせちゃったね。じゃあね、真司」
愛してるよ。
いつもならそう続く別れの言葉が聞こえた気がした。
しかしあいつの顔は明らかに恋人だったときとは違っていて、微塵にも真司へ愛を囁く気配はなくて。
真司は、自分が捨てられたのだと再認識した。
車を動かし、あいつの姿が見えなくなり、少し涙が滲んで、でも、それだけだ。
友達? 戻れるに決まってるだろう。
あいつは俺に未練がないんだから。
俺だって、いつかは。
いつかはこの想いも消えるんだ。
*****
帰宅すると、すみれは既に風呂を上がっていた。
「なんかさあ。子ども欲しいって思っちゃったよ」
真面目な顔をして言うすみれにどう返事をすればいいかわからず、その肩に手を置いた。
「でもさあ」
真司を射抜く視線は真剣そのもの。
「やらなきゃ子どももできないんだよね! 頑張るね!」
その姿に笑みが零れた。
あいつとそっくりなのに。
彼女はこんなにも、自分を幸せにする。
自分も彼女に釣り合うくらい頑張らなきゃな、と真司は決意する。
とりあえず明日は、ゲイビを借りることになりそうだ。
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俺はゲイですらないかもしれない。
意を決してゲイビデオを見た感想は、それだ。