In front of you.
理解と同時に、気がつきたくなかった感情が志岐を刺した。
隣に、秀が座った。
お互い、紅葉を見つめたまま。
「来たんだな」
「……まあね」
「メトロノーム、ありがとう」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
「相手は、誰」
「俺のことが嫌なら、関係ないだろう」
自分の言葉が、秀から返ってくる。
ほんの数分前とダメージが違った。
「志岐には、絶対に言わない」
自覚した瞬間に、失恋決定。
あんまりだろう、神様。だけど、宗教的にはこれで正しいのか。
「わかったよ。帰る」
あの胃の痛みは、秀への恋情から逃げ続けていた罰だ。