In front of you.
失礼しました、と言ってとぼとぼと帰る弟子の姿を見送り、大島は溜め息を吐いた。
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翌朝、クリスマスは快晴だった。
大島の家の帰り道に買ったメトロノームの入った袋を提げて、志岐は平岡家の扉の前に立っていた。
インターホンを鳴らせばいい。
わかっている。
ただ、寒くて手をポケットから出したくないだけだ。そして、志岐自身は気づいてないが、30分以上も立ちっぱなしである。
緊張で、早く目が覚めた結果、いろいろ前倒しになった。
やっぱり、帰ろう。8時前だけど、知ったことではない。
扉に背を向け、階段を降りようとしたとき「待って!」と引き止められた。