In front of you.
可もなく不可もなく、中途半端だ。
志岐と同じ感想を持った大島は、そのまま志岐へ返す。
「どうする。まだ、時期ではない」
先程と同じ言葉を繰り返し、大島は水遣りを再開する。
「安定、してませんか」
「自分でわかってるだろう」
「……はい」
約ひと月前の練習が最後だった。
発声練習のときに、秀への苛立ちが隠せず、声が乱れた。
大島は無表情で「しばらく来るな」と言い、志岐は解決法から逃げ続け、今に至る。
「歌いたいです」
「駄目だ」
「じゃあ、いつ」
「自分で決めなさい。ほら、あがりなさい。終わったから。緑茶でいいだろう」
「いいです。帰ります」