In front of you.
反対側の階段を昇ってきたのか。
教師はまだ来ない。
一度は自席に腰掛けた紅葉が、志岐の席まで来る。
秀は問題集を解いているようで、シャーペンを持つ手が淡々と動き、紅葉に気づいた様子はない。
佐田は読書に勤しんでいたが、他のクラスメイトたちは思い思いに騒いでいた。
「志岐ちゃん、クリスマスの件だけど」
膝を屈し、志岐の机に頬杖を突いて紅葉が囁く。
「俺はひとりで過ごす」
「3人で過ごそうよ。いいでしょう？ だって、最後かもしれないよ。来年は志岐ちゃんか秀ちゃんに恋人ができて、それどころじゃないかも。だから」
「自分は？」
「え？」
「紅葉に恋人ができる可能性は？」