In front of you.
秀に背を向け、志岐は階段を駆け上がった。
「仮病か」
廊下のロッカーで次の授業の準備をしているらしい佐田が志岐に気づき、軽口を叩く。
「重病だよ」
「あ、志岐ちゃん。よかったー」
溜め息を吐きつつ答えると、紅葉が後ろから抱き着いてきた。
「よかったー、じゃないよ、紅葉。俺、秀が無理って言ったよね」
「だけど、志岐ちゃん、戻ってきたでしょう」
「理由になってない」
「秀ちゃんは？」
「置いてきた」
「……ふうん」
志岐の様子に佐田が小さく笑って、教室に戻る。
6限目開始のチャイムが鳴った。
慌てて教室に入ると、秀が既にいた。