In front of you.
志岐の代わりに丁寧に扉を閉める秀は機嫌が悪そうだった。
「じゃあ、急いで戻ろう」
「志岐」
秀を促しても動かない。
真面目くさった顔で、志岐をじっと見ている。このままでは6限目に遅刻してしまう。
置いていきたいのは山々だが、一応、迎えに来てもらったわけだからそれはしないでおく。
「なに。戻ってから聞くから、今は」
「ニューイヤー、来い」
「俺、ニューイヤーじゃないから行けない」
助詞を省いたことを皮肉ると、睨まれた。
「ニューイヤーコンサートに、来い。お前がだ」
「嫌だ」
やっと、言えた。
秀の瞳が鋭さを増す。
胃がいつもの痛みを訴える。