In front of you.
容赦がなかった。
しばらく、息ができなかった。
「……俺を迎えに来たんだろう。保健室送りにしてどうするの」
「お前が悪い。今のでチャラにしてやる」
「ちょっと、そこのふたり。帰るか残るかどっちかにして、扉を閉めて」
木尾がこちらを見ることなく注意をする。
秀と目が合った。ああ、ここに残りたい。
「戻ります。ありがとうございました」
「さようなら」
「はいはーい。気をつけてね」
紅葉や志岐相手には決して発揮されない礼儀正しさをもって、秀が木尾へ挨拶をする。
胃の前方が擽られたように疼き、扉を閉めるのが遅れた。
「なに、ぼーっとしてるんだ」
「……きみに殴られたところが痛んでね」
「謝らないぞ」
「期待してないよ」