In front of you.
「どっ……。もういい、きみとは金輪際、口をきかない」
「なんだよ、その心配してたんじゃないのか」
教室の扉が丁寧に開けられる音を、クラスメイトたちのざわめきの中に聞いた。
「仮彼女の貞操は気にしてたけど、きみの心配は露ほども」
健全な中学生の昼休みなのに、こんな変な会話をしたくない。
「志岐」
「なに」
「やっぱりお前、いい男だわ」
ニッと笑う佐田の視線を頬に受け、腕枕の中に頭を隠す。
やっぱり、しばらく口をきくのをやめよう。
クラスメイトたちが聞きつけた気配はないが、常に緊張しておくのは嫌だ。
グッと手首を掴まれた。
「いつまでヘラヘラしてるつもりだ」