In front of you.
蓋を開けると、いつも通りおいしそうなご飯が並んでいる。
ありがとうございます、お母さん。
でも、今日はおいしく食べられそうにありません。すべては秀のせいです。
「……嫌だ。ミサは紅葉と行くから、きみは勝手にすればいいでしょう」
「なに意地を張ってるんだ」
「張ってない。きみの我儘に振り回されるのが嫌なだけ。防音室に篭って、対話を拒否したのはきみでしょう」
秀を睨むと、なんと、怯んだ。
やれやれ、やっと静かになったと志岐は安心して弁当を食べ始める。
「……ミサに行かないと言っただけで、一緒に過ごさないとは言ってない」
紅葉が噎せた。
水筒のコップにお茶を注いで渡すと、落ち着いたらしい紅葉は目を伏せじっと考え込んでいた。