In front of you.
『好きにすれば』
志岐の冷めた声に秀は一瞬、不快そうに頬を歪め、そしてひとりで防音室に篭ってしまった。
どうせ、いつもの我儘だ。
わかってはいたのに、なぜか許せなかった。
だから今年のクリスマスミサは、紅葉とふたりで行くことになっている。
「聞けよ」
「なにを?」
佐田に頬を摘ままれた。
言うとおりにならないと暴力に訴えるなんて、野蛮以外の何者でもない。
どうせろくでもないのだろうと言おうと思ったが黙っていた。
果たして、続いた言葉はもっと野蛮だった。
「だから、クリスマスデート用に誰か見繕ってやろうかって言ってんの」
「いらない。きみと一緒にしないでほしいな。それにもう、約束があるんだ」