In front of you.
まともに口をきかなくなって、3週間めに突入。
昨日の紅葉との会話を思い出す。
そう、志岐はちゃんと逃げた。
だけど、なぜ秀相手にそれが通用したかが問題だ。
そもそも、よそよそしくなったのは秀の方からではなかったか。
学園祭は親戚と回るからと言って別行動を望んだくせに、実際に隣にいたのは秀の兄、詠(エイ)であった。確かに親戚には違いない。
付属幼稚園への訪問演奏会の曲決めも、いつもは勝手に決めるくせに、「なんでもいい」と言って顔を出さなかった。
そして、クリコン準備の前には。
『今年は、ミサに行かない』
『ええー。いいじゃん、行こうよー』
いきなり宣言した秀へ、紅葉が説得を試みたけれど駄目だった。