In front of you.
「お礼って言われるほどのことはしてない。むしろ、きみの仮彼女に、きみの馬鹿な計画に巻き込んだことへ対してどうやって謝ればいいのか考えると頭、痛いし」
「仮って……。いい加減にしろよー」
がっくりと佐田がうなだれる。
茶化して終わらせようと思ったけれど。
いや、お相手のことを考えると茶化すどころか差し迫った問題だけど。
すっかり逃げ癖がついてしまった脳を叱咤し、志岐は気まずい沈黙を埋めようと言葉を継ぐ。
「それに、なにをどうするんだよ」
「合コンをセッティングする」
恋は人を馬鹿にすることが証明された。
とりあえず、佐田は無視だ。
「おーい。ふるさわくーん?」
机に頬杖を突き、目を伏せる。
秀の視線やしぐさに苛々し始めたのに、とくにきっかけはなかったように思う。