In front of you.
「なんだよ、おめでとうぐらい言ってくれないのか?」
どんな言葉を掛けようか悩む志岐へ、佐田は拗ねたように訊いてくる。
その様子にどこか切れて、志岐はオブラートに包むことをやめた。
「いや、全然めでたくない。動機が不純。相手に失礼だ」
クリスマスまでに彼女を作ると宣言していたクラスメイトのひとりは、有言実行してしまったらしい。
馬鹿正直もここまでくると公害だと志岐はひとり頷く。
彼女を作ることが目的で、クリスマスが終わったら、いや、バレンタインデーが終わったら格好良く振る、と最初からネタばらしをしていた単純男の理想を、志岐は呆れ半分、羨み半分で聞き流していた。
しかし、言うのは自由でも、実際に相手ができたのなら話は別だ。