In front of you.
「まあね」
隣の席の佐田(サダ)が話しかけてきたので、意味のない相槌を打つ。
しかし佐田は志岐を放さない。
「聞いてくれよ」
「嫌だ」
どうせいつものくだらない理想の話だろうと一刀両断する。
すると、佐田の瞳がきらりと光った。
嫌な予感がする。
「なんだ、嫉妬か?」
「きみ、まさか」
呆れが顔に出ていませんように。
そんな志岐の心中も知らず、佐田は自慢げに笑うと、志岐の耳元に唇を寄せて「彼女ができた」と囁く。
やっぱり。
呆れたが、驚きはしない。当然、嫉妬でもない。
だって理由がひどすぎる。