In front of you.
抵抗するように、緊張感なくぼそりと吐き捨てても、彼には届かない。
ぎゅっと目を瞑り、そろそろと瞼を上げる。
怖いもの見たさに似た感覚で、ゆっくりと視線を動かし、その先に彼を乗せるとあからさまに逸らされた。
もうひとりの幼馴染であり、志岐の理不尽なクリスマス嫌いを引き起こした張本人、平岡秀(ヒラオカシュウ)のそんな態度には慣れている。
なのに。
「あー……」
まただ。
じりっと胃が溶けるような痛みを覚え、志岐は瞼を下ろし、腹の底から息を吐く。
最近、感情のコントロールが難しくなった。
正確に言うと、秀への苛立ちだけが隠せない。
秀の行動に変化はない。志岐が一方的に苛立ち始めただけだ。