In front of you.
クリスマスというより、そのために行われるコンサートに対する嫌悪感が募っている。自身の声楽の練習がとばっちりを食って滞っている分、余計に。
つまり、クリスマスが嫌いというのは、言い掛かりに近かった。
時間がなければ必死で解決策を探す志岐だが、時間があると思ってしまうと、解決を先延ばしにし、とうとうクリスマスコンサート当日を迎えた。
でも、ニューイヤーまで時間があるし、と志岐は心の内で言い訳をする。
既に自分らしくない行動をとっていることは気づかないふりをした。
今日こそ解決の糸口を探そうと、休戦の旗を心に掲げて会場に足を運んだというのに、脳は既に逃げることしか考えていない。
舞台にアップライトが運び込まれた。
もうそろそろかと志岐が腕時計を確認したとき、肩を叩かれた。