In front of you.
「……どいつもこいつも」
うっかり口を突いた低い声に怯えたらしい赤いランドセルが足早に離れていく。
その後姿を見て、暴言を吐きたくなったが堪えた。
なぜ企業はクリスマスにひとりで過ごしてはいけない雰囲気を作るのだろう。
そして、なぜ人々はそれに乗るのだろう。
弱肉強食である生物の本能が刺激され、好機とばかりに排除に駆り立てられるのだろうか。キリストって博愛主義者じゃなかったのか。
そこまで考えると「僻み?」と言う幼馴染の呆れ顔が脳裏に浮かび、志岐は寒さで凍りそうな頬を緩めた。
「はやく来いよいちがつー」
わざと拗ねたように呟いてみるが、風に掻き消されてしまった。
1月が来たからといって、解決しないことは志岐にもわかっている。