幸せの代償
弟も、この兄のことが大好きなんだよ。
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「おかえり」
朝陽を出迎えてくれた父以外の靴があったからすぐにわかった。
「おじさまたち、いらしてたのね」
朝陽が実家に顔を出すと、朝陽の大好きな父の親友たちがいた。
「ああ、朝陽ちゃん」
樋山のおじさまはにこにこと周囲を明るくするように笑う。
「もう出るところなんだ。会えてよかった。これ、事前の祝いね」
テーブルの上にはアルバムが2冊ある。
「見てもいい?」
「どうぞ」
緒方のおじさまが控え目に笑って、差し出す。
朝陽の成長と、悠太の学生時代がそこにあった。
「まあ、草場に泣かされるようなことがあったら、おじちゃんたちに連絡ちょうだいね。あいつの恥ずかしい話、話してあげる。何があっても、朝陽ちゃんの味方だから」
父に愛されているのは知ってる。
その親友たちに愛されていることも、幼馴染たちが大切に思ってくれていることも。
「樋山のおじさま。緒方のおじさま」
いい女は、そう易々と泣かないのよ。
そう教えてくれた優しい人はもういないけど。
「ありがとうございます。大切にします」
今度はこの子を、幸せにするから。