旅の終わり | ナノ

愛の形

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「だってねえ。朝陽ちゃんのお父さんが男子校ってことを伝えてないから,朝陽ちゃんも悶々と悩むことになるんだもんね。大丈夫だよ,朝陽ちゃん。すみれちゃんもね,風花(かざはな)だったけど,恋愛はともかく結婚したから」
 父と緒方のおじさまが吹き出した。
 ちょっと,何それ。
 私は恋愛もしたいの。
「朝陽,恋愛の話はできないけれど」
 父が涙を拭いながら言う。
「学生時代の話は,できるよ。そう,そこのふたりの」
 途端に真顔になるおじさまたちがあまりにもかわいらしくて,朝陽は笑った。

*****

 帰宅して,父に話をせがんだ。
 父はアルバムを取り出し,見せてくれた。
「どれが誰かわかる?」
 そりゃあ,父とおじさまたちの顔くらいはわかる。
 最後の写真は,ツーショットだった。
 見てる方が恥ずかしくなるような,泣きたくなるような,満面の笑顔だ。
「この人だけ,会ったことない。生きてる?」
「生きてると思うよ」
 再びその写真を見る。
「気になる?」
「うん」
「これはね,草場悠太。お父さんの,大親友だよ」
 父はそれから洗濯物を取り込みにいって,朝陽も風呂に入ったから,その写真を見たのはその一度だけだ。


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