四季の都 | ナノ

What's the matter?

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 耕造が気絶するように眠ったので、そっと寝台を抜け出し扉を開けると喉元に剣を突きつけられた。
「何か言いたいことはありますか」
 護衛はにっこりと笑い、四葉は動くに動けず黙って睨みつけたが動じる様子はない。
「お前があれを男だと気づいてないとは思わなかった」
「可愛い弟が男に宗旨替えしたことを言えずに悩んでいるのだろうと察して黙っていた優しい兄に向かって何を言いますか」
「お前がそんな殊勝なことを思うものか」
 苦々しく吐き捨てた四葉を護衛の視線が優しく包むのがわかった。恥ずかしいやら悔しいやらで、首を横に振ると僅かに切れたのがわかった。
「ああ、もう……」
 呆れたように零し、剣が鞘に納められる。
「消毒しますよ。こちらへ」
「――別に、いいよこのままで」
「どうせ、眠れないのでしょう」
 何もかもを見透かしたような声に苛立ち、そっぽを向くと優しく手を引かれた。


 消毒薬の臭いが鼻につく。
 領主の護衛を務める風月にとっては慣れた臭いだったが、なんだかんだ言って傷とは縁遠い生活を送っている弟には耐えがたいものらしい。必死で口呼吸をしようとしている様子がなんともかわいらしく、風月がくすりと笑うと凄味のある形相で睨まれた。
「お前は」
「はい」
「あいつ、どう思う」
「玲菜さまの代わりになるかどうかは分かりませんが。あなたのお好きなように」
「風月」
「はい」
「玲菜の家を調べろ。娘の代わりに息子を人身御供に差し出して、自分たちに災いが及ぶと思っていない馬鹿どもなのかどうか」
「仰せのままに」
 おどけた調子で返そうと思ったのに、四葉があまりにも寂しそうだったので、思わず真剣な声になってしまった。
 四葉も驚いたのだろう。風月へ抱いた怯えを無表情の下に隠そうとして失敗している。



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