四季の都 | ナノ

Nice to meet you.

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 耕造の年子の妹、玲菜が冬の都の領主に見初められた。
 認めるわけにはいかない。
 冬の都といったら治安の悪さもさることながら、遠く離れたここ、夏の都でも領主の悪名は轟いているのだ。
 というわけで男、耕造。
 女になります!

*****

 冬の都の領主、四葉は寝台で心臓の真上に短剣を突きつけられても表情ひとつ変えなかった。
「私を殺したら、きみも生きて帰れないよ」
 命乞いではなく、淡々と事実を告げた。
 妻であるはずの少女はそのまま短剣を押し込もうとするが、手が震えている。
 ふむ、と内心首を傾げ、寝返りを打つ要領で少女を押し倒すと短剣が床に転がった。
「ご無事ですかッ!?」
 扉の向こうに控えた護衛の耳は穏やかでない音を拾ったらしい。まったく面倒だ。
 短剣を拾い上げ、本格的に震え始めた少女を振り返り溜め息。とりあえず本人に返そうとしたら投げ返された。危ない。
 今にも扉を蹴破りそうな気配を感じたので、扉を開けると護衛がやはり血相を変えていた。
「問題ない。引き続き、任務に当たるように」
「はッ」
 まったく過保護め、と思うが、今はそれどころではない。
「玲菜」
 びくんと少女の体が波打つ。
「きみが男ということくらい、気がついている。まさか殺されるとは思わなかったけれども」
 少女もとい少年は目を丸くした。
 騙しとおせると思ったのだろうか。
 もしや、武人として舐められているのだろうか。
「それで、何が目的かな」
「――玲菜を、妹をもう攫っていかないように」
「それで殺そうと? なんという浅はかな考えだ。私を殺したら、我が一族はきみの家族を皆殺しにする。戦にもなるだろう」
「やってみないとわからない」
 怯えながらもこちらを睨みつける様子に呆れた。無鉄砲だ。



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