秘匿
学び舎で優秀な成績を修めたので、父王が欲しいものを何でもくれるという。
一瞬、コウのことを思い浮かべた。
しかし、首を横に振る。
「では、あなたの愛妾を私にください」
そろそろ、性的なことに興味を持つ年頃なのですと真顔で告げる。
父王は精悍で国民に安心感を与えると称えられる顔をニヤリと歪めて笑った。
「わかった。セイはお前にやろう」
あまりにもあっさりした答え。
もっと執着するかと思ったが、父の飽きっぽい性格を考えると意外ではない気もする。
「ありがとうございます」
その晩、リュウの部屋にセイは現れた。
「私のものだ」
セイは一言もしゃべらない。
綺麗な顔に表情はなく、つまらない。
かつて氷の宰相と恐れられた男も愛を知ると随分とくだらない人間へと変貌したものだ。
溜め息を吐き、リュウが寝台に転がるとセイが潜り込んでくる。
ふたりは背中合わせに体を丸めて眠った。
*****
リュウが褒美として王の愛妾を譲り受けたという噂は日の暮れる前に城を駆け抜けた。
興奮気味の同僚から聞いたコウは、最初はまさかと思っていたものの、実際に現れたセイを見て仰天した。
「セイさま、こちらはリュウさまのお部屋です。たとえあなたといえどもお通しするわけには参りませぬ」
「存じ上げております、コウ殿。しかし私はリュウさまのものとなりました」
噂は本当だったのか。
コウの失恋を意味するセイの言葉に心中、よろめきそうになりつつ、表面上は平静を保つ。
「証拠がござりませぬ」
「お前も忠義者だなあ、コウ」
食い下がるコウの耳に聞こえたのはこの国の王、ハクの声だ。
松明に照らされ、野性的な印象を更に強めている。
「陛下、なにゆえかような場所へ」
「おいおい、俺の息子がいる場所をこれ呼ばわりするなよ」