四季の都 | ナノ

籠の鳥と言いますが

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「勇者さまに、神のご加護がありますように――」

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 杜今は避けようとしなかった。
 珠里は、見ていた。
 賢志が杜今を刺すのを見ていた。
「“お前と真桜が逃げるのは止めない。その代償を、見届けろ”」
 杜今に託された言葉を珠里が言い終わる前に、彼は事切れた。
「――どっちにしろ、きみたちを捕まえなければ待つのは死。ならば、逃亡者たちに殺された方がいいんだって。わけわかんない。ね、賢志、真桜」
 賢志はうろたえていなかった。
 愛する人がいれば、幼馴染なんてその他大勢なのだ。
「今度は命を大切にする時代に生まれたいよ」

*****

「賢志、本当に見届けるのォ?」
 珠里は気が進まなかった。
 共に旅をした真桜の処刑の日。賢志はこっくりと頷き、杜今は「好きにさせてやれ」と珍しく弱気に囁いた。
「ちょっと、用を足してくる」
 何気ない言葉だった。
 ひとりになりたいのだろう、と珠里はその背を見送り、杜今は腕組みをし目を瞑っていた。
「逃げたぞッ!」
「捕まえろッ!」
 どうせまた、泥棒だろうと杜今と目配せをした。
 また賞金が増えて困っちゃうなあ、そんな感じで。
「勇者が魔王と逃げたぞーッ!」
 ふたりは慌てて駆けだした。

*****

 幼馴染ふたりを埋葬した後の賢志の表情は固かった。



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