四季の都 | ナノ

籠の鳥と言いますが

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 捕まえたいけど捕まえたくない。
 しかし、そうも言ってられない。
 半年の間に見つけられなかった場合、処刑台に上るのは杜今と珠里だ。
 命が惜しいならば、捕まえなくてはならない。
「まったくめんどくさあい」
 珠里のぼやきを杜今は無視した。

*****

 魔王城に仕掛けられた数々の術を突破した先にいたのはひとりの少女だった。
「お兄さま、遅いわ」
 拗ねたように言う少女にさくらは眉間の皺を深くした。
「あなたたちの旅はずっと見てきました。この国の王女、実桜です」
「……どういうことだ」
 杜今が呟くとさくらが溜め息を吐いた。
「俺の本当の名前は真桜。真の桜と書く。最初は剣士だったんだけど真桜と名乗ると魔王に間違われるから魔王になったんだけど」
 ふうんと感心したように賢志が唸った。
 きっと共感しているに違いない。
「いつも思うの。魔術よりも剣が強いのかしらって。魔王の城にやってくるのは剣士ばっかり。魔術を使う魔王の城なんだから、魔術で対抗しなさいよね」
「お前、妹がいたのか」
「賢志、突っ込むの遅い」
 緊張が霧散した真桜はこめかみを押さえると再び実桜に向き直った。
「実桜、俺にどうしてほしいの」
「戻ってきてほしいの。ひとりは嫌」
「戻ったところで、俺は処刑されてしまうよ。今の俺は王女を攫った魔王だ」
「術を解けばいいのよ」
「それができなかったから、実桜はここにいるってことぐらいはわかる」
「相変わらず嫌な性格ね、お兄さま」
「ん? この子が王女ってことはお前、王子だったのか」
「……とても遅い突っ込みをありがとう、賢志」
 杜今は弓を下ろしているし、珠里も術を掛ける気配がない。手持無沙汰な賢志は真桜の背中を見つめる。



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