籠の鳥と言いますが
顔を見合わせ、思い当たったことにげんなりするが自分たちは使えないのだから、地道に魔王城を目指すしかない。
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「どうしたの、賢志」
「……いや」
懐かしい声が聞こえた気がした。
賢志は瞳を閉じた。もう少し夢の余韻に浸っていたかった。
「賢志。ありがとう」
真桜がそっと囁くと賢志は満足げに笑みを浮かべた。
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「お兄さま、お久しぶりです」
すべての人から記憶を消したつもりだったのに、真桜より魔力が強かったらしい妹の実桜(ミオ)の記憶は残っていたらしい。
術を突破しやってきた実桜は明るく笑った。
「魔王は、私よ」
妹は真桜の力を奪うと移動魔法を掛けた。
春の村付近に着地したと気づいた真桜は魔術を使おうとしたが無理だった。
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「城下町から春の村がもう少し近かったらいいのにねえ」
「そうだな」
会話終了。
体力を削るので道中の会話はあまりない。
城下町の情報収集は大して意味がなかった。
自主的軟禁の王女さまに会おうとするも結局、門前払いされた。
春の村で、一戸一戸訪ねるのかと思うと気が遠くなる。
4日ごとに王から生活費はもらえるが、なんだか割に合わない気がする。
今度処刑台に上るのは真桜だけでなく、賢志もなのだから。
幼馴染をこの手で追い詰めているのだ。