四季の都 | ナノ

籠の鳥と言いますが

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「女の子がむさい男の中に加わるのはやめたほうがいいよォ」
「え」
 珍しく声を漏らしたのは賢志で、珠里を振り返りまじまじと見つめている。
「賢志、どうしたのォ?」
 賢志は答えずに少女を憐れむように見た。
 杜今は呆れたように黙っている。
 少女はというと眉間に皺を寄せ、深呼吸をしていた。
「俺は、男だ」
「え、ほんとに?」
 しかも他のふたりは気づいていたらしい。
「邪魔」
 気だるげに吐き捨てた賢志は再び歩き始める。
 普段感情を露わにしない賢志の憎悪の籠った声に取り残された杜今と珠里は思わず身震いをする。
 しかし少女もとい少年はしぶとかった。
「待って! 俺、剣を使えるよ!」
 言ったと同時に賢志から剣を奪い取り喉元に突きつけていた。
 次の瞬間、少年の体が宙を舞った。
 どさり。
「あーあ……」
 面倒臭そうにぼやいた元魔術師の現剣士は自らの剣を取り戻すと肩を竦めた。
「杜今と珠里で決めて」
 地上1メートルから叩き落された少年はのそのそと起き上がっている。
 あまり堪えてないらしい。
 杜今と珠里は顔を見合わせた。
 怪しすぎる。
 王女が魔王に囚われてからというもの、魔王城を目指す旅人は多い。
 だから、少年が賢志たちの行き先を言い当てたことは珍しくもなんともない。
 賢志から剣を奪い突きつけたことと、魔術を使われてもすぐに起き上がることができたこと。
 自分たちふたり以外でそれができる人間を、杜今と珠里は知らない。
「井の中の蛙って感じだねえ」
 自嘲気味に珠里が言い、杜今は頷いた。
「お前、名前は?」
「さくら」



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