籠の鳥と言いますが
杜今の言葉に頷いた珠里は、
「ほいッ!」
自らの剣を棚から取り出し杜今に切りかかった。
「あーあ避けられちゃった、ざーんねん」
「っざけんな!」
怒鳴り返す杜今の手の中では彼の代わりに犠牲になった弓が綺麗に折れている。
「それ、高かったんだよォ」
わざとらしく珠里が言うが、これは杜今が自分の稼いだ金で買ったものだ。
武器屋はもう閉店している時間だ。
「明日の朝には出発するからねえ」
にっこり笑う珠里を無視して、杜今は寝台に入った。
実力行使する奴の傍にいると、金がいくらあっても足りない。
*****
はじまりの村で、魔王城からの王女救出の依頼を受けた賢志たち3人は装備を整えるのもそこそこに春の村へ出立した。
魔王城へは春の村、夏の村、おわりの里、秋の村、冬の村、四季の街を経由する必要がある。
「そこの旅人さん。俺も混ぜてよ」
春の村もあと2時間ほどとなったとき、美しい少女が現れた。
しかし3人とも彼を見向きもせずに歩き続けたので、少女が慌てて通せんぼをした。
「ちょっと待って! この俺が待てって言ってるんだから待ってよ!」
杜今が弓を構えた。
「え、ちょっと君たち冗談が通じない人たち!? ねえ、ちょ」
賢志が剣を構えた。
「あー、どいたほうがいいよォ」
しかたがなく珠里が助言すると、少女はこくこくと頷き横へどいた。
杜今と賢志が構えを解いた。そのまますたすたと歩き始めたので珠里もついていくと少女もなぜかついてくる。
「ねえ、邪魔しないからさ。ついていっていい?」
「行き先も知らずについていくのはやめたほうがいいと思うなあ」
「だって君たち、魔王城へ行くのでしょう?」
賢志のマイペースと杜今の人間嫌いは今に始まったことではなく、逃げ遅れた珠里は苛々しつつ相手をする。そもそも。