四季の都 | ナノ

What's the matter?

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 なんとなく扉の外が騒がしいのを感じた。
 不思議に思い外に出ても、自警団の連中が駆けまわっているだけ。
「いったい何がどうしたというのです」
 年嵩の人間を捕まえて問えば、「玲菜さまのお姿が城内にないのです」と蒼褪めた顔で答えられた。
 なんだって、と訊き返したい半面、妙に納得してしまった。
「わかった。ありがとう」
「はッ」
 わき目も振らずに屋上まで駆けあがった四葉の目に映ったのは、遥か下の地面を冷めた瞳で見下ろす耕造だった。
「どういうつもりなんだ、きみは」
 返事はなく、四葉の苛立ちは募る。
 横顔ばかりで、視線を合わせようとしないなんて失礼にも程がある。
「答えなさい。どういうつもりだ」
 近づきながら問い詰めても、警戒する気配がない。
「お前には関係ないだろ」
「ならばとっとと飛び降りろ!」
 四葉の怒声と同時に、躊躇わず耕造の体が宙に浮く。
 その腕を掴む。
 まずい、と思うと重力に逆らう方向へ引っ張られ、次の瞬間、屋上の床に叩きつけられた。
 体中から息がなくなったような感覚、そして声も出ないほど腰が痛い。
「――言い訳はありますか」
 地を這うような護衛の声に、頭痛までしてきた。
 ただ、腹の上でもぞもぞと耕造が動いているのがわかる。
 重い。
 痛い。
 早く退け。
「これを地下牢に。四葉さまは救護室へ」
「はッ」
 痛いと言いたいのに声はやっぱり出なくて、抵抗することもできず先程訊いた年嵩の自警団の男におんぶされる。
 耕造は護衛によって縄を打たれ俯いており、その表情は見えなかった。





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