四季の都 | ナノ

What's the matter?

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 頭を撫でようとしたら、手を弾かれた。
「護衛のくせに、気安く触らないでくれるかい」
 余所向けの笑みが風月に突き刺さる。
 本心を誰からも見えないようにしようとする四葉が不憫だった。
「失礼いたしました」
「わかればいいよ。早く調べに行ってよ、護衛」
 礼を捧げず、風月は救護室を後にする。
 玲菜の家のことは、その兄である耕造に聞くことが手っ取り早いだろうと四葉の部屋へ舞い戻る。
 手違いとはいえ、一応領主の妻だ。扉をノックをしたが返事はなかった。
「失礼します」
 扉の向こうにもはっきりと聞こえるはずの音量で告げても音沙汰がない。
 まさか自害したのではないかという嫌な予感に襲われ、許可なく扉を開けると窓は開け放され、カーテンが爽やかにはためいていた。
 唖然としている暇はなかった。
 攫われたのか。
 脱走したのか。
 窓に駆け寄っても、どちらの痕跡も見つからなかった。
 風月は自分でもわかるほど冷静だった。
 急いで自警団を、召集しなければならない。

*****

 窓を伝って、城の最上階まで登っていく。
 普通、逃げるなら下に行くと思いがちだから、きっと、見つかることなく旅立てる。
 耕造は男だ。
 だから、男に辱められる前に、この命を絶つ。
 玲菜は無事、逃げ切れただろうから、心配はしていない。

*****

 護衛の去った救護室は本来の寒々しさを取り戻し、四葉は苦々しい想いの捌け口を探して床を蹴った。
 気は晴れない。



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