懸想
ずっと前から気になっていた門番の男が街で殺されそうになった。
王子の護衛であるのに、なんという体たらく。
そのように呆れるよりも、自身の恋心に気づいてしまい、リュウは愕然とした。
「この役立たず」
この想いを父王が知ったら言うであろう言葉を、彼に向かって言ってしまった。
あの瞬間の見開かれた彼の瞳がリュウを苦しめる。
男を愛妾として召し上げ、義務として妻たちを娶り子を為した父王をリュウは軽蔑している。
そこまで考え、リュウは声を上げて笑った。
愛妾?
召し上げる?
ろくに会話を交わしたこともない相手に自分は何を戯けたことを。
こんなことを考える暇があったら、学を修めなければならない。
語学、地学、歴史。
学ぶべきことはたくさんあるのだ。
娯楽として愛を求める暇などない。